プロポーズは、きっと人生で一度。
少なくとも私は、そう思っていました。
女の子にとっては、たぶん一番憧れる瞬間だと思います。
サプライズで、花束があって、まっすぐな言葉があって、涙がこぼれる。
そんな光景を、私にもいつか来るその瞬間を期待して思い描いていました。
でも、私のプロポーズの現実は違いました。
実は私は、事前に彼に聞いてしまっていたのです。
「いつ頃する予定なの?」と。
年内の何月頃かまで、なんとなく知っていました。
だから、予定の月日が近づいても何も起きなかったので、ずっとそわそわしていました。
年末に1年間お疲れ様ということで1泊2日の慰安旅行が前々から決まっていました。
以前彼はその旅行はあくまで慰安旅行だから、プロポーズはする予定ではないと言っていました。
でも、もうその旅行の時でしかチャンスはなかったので、私はもう確信していました。
「きっとこの日だ。」
最上階の露天風呂付き客室
行き先は鬼怒川温泉の老舗旅館。
しかも奮発して
最上階の露天風呂付き客室を予約していました。
“いかにも”な舞台が整っていて、プロポーズにはもってこいな場所でした。
旅行当日、私は気合いを入れていました。
その日のための服も、髪も、メイクも。
チャックインして部屋に入ったとき?
館内を散策した後?
お風呂に入った後?
いつどのタイミングであってもいいように
大浴場に行ったあとも浴衣に着替えず、メイクもやり直してスタンバイしていました。
期待しているからこその落胆
夕食の時間になりました。
夕食は半個室のシックで大人な雰囲気の会場。
今かもしれない。
花束が出てくるかもしれない。
ケーキがあるかもしれない。
そう多いながらワクワクとドキドキで夕食を楽しんでいました。
しかし、何も起きないまま食事は終わりました。
戻った部屋にも何もなく、私はそこで完全にあきらめていました。
もう今日はないのかもしれない。
やはり今回の旅行はただの慰安旅行でしかないのかもしれない。
もう、プロポーズのための服やヘアメイクもどうでもいい。
お風呂に入って、寝よう。
ついにプロポーズ!?
トイレに入ったとき、彼が部屋を出る音がしました。
私は「彼もトイレかな」くらいに思っていました。
トイレから出ると、ちょうど彼が戻ってきました。
両手には大きな紙袋。
「なんで出てんねん。」
いやいや、こっちのセリフ。
なんでこのタイミングで、、、??
彼の計画では、
私がトイレに入っている間に、最上階から1階建物の外の駐車場に行き、
車のトランクの中に事前に用意していた、プロポーズ用の小物を持って、
部屋に飾りつけるつもりでいたそうです。
、、、いや、無理があるでしょ。
私がトイレに入っている間でそんなの間に合うはずないでしょ。
彼は、私バレてしまったことで、落ち込んでいる様子。
紙袋の中身も出さないまま、黙っている彼。
落ち込みたいのは私。
結局、私が中身を取り出しました。
ポケモンのぬいぐるみが2匹。
ピカチュウのブーケ。
大きなピカチュウのぬいぐるみがプレゼントを持っていて、その中に指輪。
ちなみに私は、ポケモンファンではありません。
好きなのは彼のほうです。
理想と現実
ここまで用意してくれたことは本当にありがたい。
でも、正直に言うと、少し複雑でした。
素直には喜べなかった。
だって、ポケモンファンではない私が、
ポケモンに囲まれてプロポーズされても
『やった!!!うれしっ!!!!ポケモンだ!!!』
てなるはずがなく。
想像していたプロポーズとは、だいぶ違う。
彼が言うには、人と違うプロポーズをした方がいいと思った、とのこと。
いや、でも誰に対してのプロポーズ?私のためのプロポーズではないよね?
こんなことを思ってしまう私は心が狭いのかもしれない。
夢にまで見たプロポーズ。
ついにきた憧れのこの瞬間が、こんなにも複雑で素直に喜べないものだとは
想像していませんでした。
崖っぷち28歳の決断
プロポーズの言葉は
はっきりとは覚えていません。
ただ、「それで、どうするんや?結婚するんか?」と腕を組みながら聞かれたのは覚えています。
その瞬間、本気で悩みました。
付き合って2年。
当時28歳。
理想の結婚適齢期は過ぎていた。
高級旅館に泊まっている。
ここで断ったらどうなるのか。
おそらく今までのようには付き合えない。
別に彼は悪い人ではない。
ちゃんと私のことを最優先に考えてくれる。
この人と別れたら、きっと20代のうちに結婚すると言う夢は叶えられない。
断る勇気なんてない。
憧れと現実を、天秤にかけました。
出した答えは「YES」。
人と比べてしまう愚かな自分
運命の人と運命的な出会いをし、理想なプロポーズをしてもらい幸せになる。
そんな物語はなかったけれど、それでも私は彼と進む道を選びました。
答えを出したあのとき、
流れた涙が、嬉し涙だったのか。
覚悟の涙だったのか。
本当のところは、今でも少し曖昧です。
友達の、心からの涙を伴うプロポーズ話を聞くたびに、
私はあんなに綺麗な涙は出なかったな、と思うこともあります。
なぜ私たちのプロポーズはこうなってしまったのか、
プロポーズの時期を聞いた私が悪い?
部屋を出た彼の本当の理由に気づかなかった私が悪い?
ポケモンだったのが悪い?
準備のタイミングが悪い?
たぶん、誰も悪くない。
ただ、理想と現実が違っただけ。
私が受けたプロポーズの事実と友達が受けたプロポーズの事実は一緒。
本音
できることならやり直したいです。
バラの花束も欲しかったし、ちゃんとした言葉も欲しかった。
プロポーズの瞬間、
期待して準備した私の写真は
1枚も残っていないです。
あるのはポケモンのぬいぐるみと指輪をしている左手、腕を組んで座っている彼の写真だけ。
でも、プロポーズをOKしたことに後悔はありません。
あのとき本気で悩んで、迷って、それでも彼を選んだ。
それが、今の私たちです。
完璧じゃないプロポーズ。
もしこの記事を読んで、
「そんなことで悩むなんて」と思う人がいたとしても、
あのときの私の感情に、嘘はありません。
憧れと、がっかりと、不安と、覚悟。
全部本気でした。
そして、その延長線上に、今があります。
未完成だったけれど、
あれが私たちのプロポーズでした。

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